公務員人事制度改革

人事評価が低くても毎年昇給!? 公務員給与を民間感覚へ

「公務員は厚遇」といった漠然としたイメージをお持ちの方は少なくないと思います。公務員給与が高いと思われる主な要因は、平均所得が高いことと、民間の同業種との給与差ではないでしょうか。京都市の公務員人件費状況を見てみると、同規模の政令20都市との比較において、市民一人当たりの人件費および市民千人当たりの職員数ともに下記のグラフの通り他都市よりも高水準となっております。

京都市では職員の委託化が進んでいないことや、生活保護率が高くその分のケースワーカーも多いこと、行政区が多いことなどが要因としていますが、同じく生活保護率の高い大阪市や札幌市では一般職員の数が他都市以下となっていることから全体的に人数が多く、給与を高水準であることが伺えます。こういったデータから構造的な課題を抱えている状況が伺え、京都市の公務員給与体系ならびに人事制度の調査に踏み切りました。

平職員でも1000万?

まずは気になる公務員の給料表。通常、1級係員から始まり、そこから局長まで8段階に分かれ、それぞれの級に「号給」というこまかな給料額が定められています。ちなみに3級の主任までは年齢や勤続年数により昇格していき、いわゆる平職員の括りに入ります。

京都市行政職給料表

この表でまず驚くのは、1級から8級まで職責により給与が区分けされているにも関わらず、給与額の重複が非常に目立つ点です。給与表を図2のように図式化すると、級同士の給与額の重複が多いことがより顕著にご理解いただけると思います。

京都市職員給料表

1級から8級へと役職が上がるにつれて給与水準が上がっているものの、例えば図2で示しているとおり、4級の係長職員と5級の課長補佐の職員とでは金額幅が78.2%も重複しております。さらに言えば、3級の主任級の職員は、上限の39万4,800円の給与を受け取る定年に近い職員の方が多く該当されており、この額は8級である局長級の給与範囲に匹敵するものとなっています。通常、民間感覚で考えれば役職が上がれば当然責任も重くなりますが、給与には大きく反映されていない実態が表れています。

京都市の公務員は、毎年一定割合ごとに給与が上がる仕組みで、役職が上がらなくても定年近くまで給与が上がり続ける仕組みになっています。その結果、ボーナスや残業代を含めると年収1,000万円を超える職員もおり、京都市に確認したところ、管理職にあたらない3級の主任級職員でも、年齢昇給により上限額を受けとっている職員の平均年収は約780万円にのぼることがわかりました。平職員でこれほどの所得を受け取れることこそ、公務員=高所得というイメージがつきまとう大きな要因と言えます。

頑張った人もそうでない人も給料が一緒

公務員給与の構造的問題としてもう一点挙げたいのが、昇給幅が職員皆一律ということです。民間企業なら役職や成績などの人事評価が昇給に反映されますが、京都市職員の昇給は人事評価を加味せず基本は年度ごとに一律で昇給していきます。人事評価が低くとも、休職や問題を起こさない限り昇給します。一方で、組織や事業に大きく貢献し、職責を果たしても決まった幅でしか昇給しません。           

京都市では人事評価制度が導入されており、評価分布自体は30点から70点まで大きな開きがありますが、これが昇給には繋がらないというジレンマを抱えています。
人事評価をする意味は必ずしも給与反映のためばかりではないとはいえ、昇進にも必ずしも結びついていないとも聞くため評価制度の形骸化も危惧されます。頑張っても責任が増すばかりで、昇進を目指すほどの魅力が感じられないためか、京都市の係長認定試験の受験率は24%(2012年)に留まっております。

京都市昇給額が同じ!?
京問題点の総括

これから京都市は職員のマネジメントにおいて大きな改革が必要になってきます。最大の要因は財政難です。先に述べた通り、京都市は他都市よりも人件費が嵩んでおり、財政の健全化を目指すためには支出全体の2割以上を占める職員人件費においても見直しを行わねばなりません。これまで、人件費においては退職者より新規採用を絞ることで職員数カットを実施してきましたが、他都市よりも未だ高水準となっています。大切なことは、職員の働くモチベーションを低下させないことであり、そのための給与制度改革を提言致しました。

昇給に差を設けよう

人事評価をもとに昇給幅を決める仕組みへ。

人事評価について

上の図で示している通り、人事評価に基づいて昇給に差を設けることを提案しました。一律昇給を改め、評価結果に応じて昇給幅に段階をつくり、著しく評価の低い職員には「昇給なし」という項目も設けるべきです。
京都市は「管理職以外の職員は仕事の幅が広すぎて一概に昇給の差を設けるのは適さない」としていますが、東京や横浜、大阪といった他都市や国家公務員においても“職務に準じた給料”との認識のもと、貢献度に即した昇給の仕組みが導入されています。総人件費に係る見直しは、一律カットなどの職員モチベーションの低下を招くものではなく、職員のやりがいや納得感に沿った新たな給与制度改革という手段によって進めるべきです。

昇給の限度を是正すべし

極端な年功賃金制は、昇格へのモチベーション低下や構造的な人件費の膨張を招きます。

昇格に関わらず定年間近まで昇給しつづける構造が、各役職の昇給幅が高くなる要因です。このような年功賃金制が顕著になり過ぎると、人件費が嵩み、役職ごとの給与差がほとんど出なくなることから昇格へのモチベーション低下をもたらしています。厳しい財政難を乗り切るには、これまでの職員削減だけでは間に合わず、職員のモチベーションを低下させる策では乗り切ることができません。

現行制度の課題を取り除き、同一労働=同一賃金の観点から職責に応じた給与体系を作り直し、適切な昇格が職員へのモチベーションに繋がっていく仕組みにすべきです。

給料表のイメージ

上図で示したとおり、幹部職員の給与は顕著にアップさせ、全体の85%を占める非幹部職員の給与上限は年功制度に縛られず上限を削るメリハリある賃金体系を提言しております。幹部職員のみの優遇にしかならない、と感じられるかもしれません。しかし、幹部職員には残業代がでず、かえって非幹部職員の方が給与が高いという逆転現象すら起こっています。職責に応じた給与制度改革は、“頑張っても報われない”という職員の働くモチベーションの低下が、敷いては行政サービスの低下を招いてしまう事態から脱却を図るための根幹になります。

≪公務員給与制度改革によって期待できる効果≫

職員のモチベーションの維持向上

長期的キャリアを見据えた昇格意欲の向上

人事評価制度の形骸化防止

仕事への意欲向上による市民サービスの維持向上

総人件費の抑制フォームの始まりフォームの終わり