北陸新幹線・京都市内着工。未来のために、今、立ち止まって。

北陸新幹線・京都市内着工について

北陸新幹線は、日本全体の国土強靭化に資する重要な国家プロジェクトとして位置づけられています。令和6年6月には金沢〜敦賀間が開業し、いよいよ令和7年度には京都市でも工事が始まる予定です。 しかし、京都市にとってこのプロジェクトがもたらす影響は決して小さなものではありません

◆京都市への重大な影響

  • 莫大な財政負担

    福井県の試算を参考にすると、京都市の負担額は数百億円規模に及ぶ可能性があり、今後30年間にわたって毎年10億円を超える支出が発生する見込みです。
    これは松井市長が就任後に若者・子育て支援施策(3.5億円)として新たに掲げた支援策の約3倍にも相当します。 高齢化による社会福祉費は今後も増加見込みで、公共施設の老朽化対策も長寿命化対策で延命をしながらも険しい道のりとなっており、北陸新幹線誘致による地元負担は行政運営に多大なしわ寄せを与えることになります。財政的効果がプラスとなる数値的根拠が出ていないことにも注視する必要があります。

  • 環境への懸念(地下水・建設発生土)

    地下トンネルが難透水層を通過する際に、浅い層の地下水と深い層の地下水が混ざり合うことで、地下水の水質が変化する可能性があると指摘されており、京都の命ともいえる地下水脈への影響が懸念されています。これは京都の酒造や漬物など、伝統産業への影響にもつながります。
    北陸新幹線・京都市内着工について
    【出典】京都市「北陸新幹線敦賀・新大阪間の整備について」より抜粋
    https://www.city.kyoto.lg.jp/sogo/cmsfiles/contents/0000335/335756/1213.pdf


    また、地下工事により大量の建設発生土の受け入れ場所も大きな課題です。北陸新幹線新大阪延伸の「小浜・京都ルート」では東京ドーム約16杯分に当たる約2千万立方メートルの建設残土が発生すると見込まれています。また、そのうち約30%が重金属を含む要対策土であるとみられ、処分地確保の目途はたっていません。


  • 交通渋滞

    工事着工となれば⾧期間に渡り土砂の運搬や資材の搬入のために、市内を大量の工事車両が往来することになります。京都市は古き街並みが残り生活道路が狭い課題を抱えています。また、観光バス等により市内各地で渋滞が発生しており、深刻な交通渋滞が発生する懸念があります。

◆未来を見据えた最善の選択を — 「今」だからこそ、再検討を

北陸新幹線の京都・小浜ルートが決定されたのは2016年。それから8年が経ち、事業費は当初見込みの約2倍、工期は最大28年に及ぶという新たな試算が国交省から提示されるなど、事業の前提条件は大きく変化しています。完成は2050年頃と見込まれていますが、その頃にはリニア中央新幹線が東京〜大阪間を結んでいる可能性もあり、北陸新幹線の役割や意義そのものも見直しが必要です。

さらに、小浜ルートの詳細案には「京都駅を通らない分離駅案」まで含まれ、当初の構想から大きく乖離しています。

一方で、米原ルートの再評価を求める声も高まっており、石川県議会をはじめ石川県内の複数の市議会では、米原ルートへの支持が広がっています。米原ルートであれば、費用対効果が見込め、工期の短縮も期待できます。加えて、舞鶴ルートを含め、他の可能性についても改めて検討し、最も持続可能で合理的な選択肢を探るべきです。 8年前の判断に縛られるのではなく、「今」だからこそ、私たちは立ち止まり、未来に責任ある選択を考えるべきときに来ています。

◆京都市は今、声をあげるべき

北陸新幹線は確かに国策ではありますが、都市が数百億円を負担し、長期にわたって市民生活や環境に影響を与える事業である以上、「市には決定権がない」では済まされません。

  • 市として国に対し、ルートの再検討を求めるべきです。
  • 有識者だけでなく、市民の声を広く聞くプロセスが必要です。
  • 京都市民にとって本当に必要な投資なのか、冷静に見極めるべきです。

令和7年夏の参議院選挙も、一つの大きな判断のタイミングとなります。

市民の皆さんと共に、未来の京都にとって最善の選択を。