代表質問の全文

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昨日の代表質問の全文を掲載させていただきます。

議場でお話することを前提に作った文章のため、読みづらい点も多々あるかと思いま
すがご了承ください。

まずはいじめ問題についてです。今回、大津市で大変痛ましいいじめの報道がなされ
て以降、大阪、兵庫、広島など全国から相次いで過去のいじめの告訴等がされるな
ど、いじめの問題が大きく取り沙汰されています。中には、被害者生徒が自殺に追い
やられるケースさえあり、非常に深刻な事態となっています。また、学校側でいじめ
の可能性を把握していたにも関わらず、いじめの事実を否定し、捜査が入った後にい
じめの事実を認めるといった事例も目立っております。こういった状況の中で、改め
て学校対応が問われております。

いじめは、児童生徒の大切な教育環境を脅かす社会問題です。大津市の件と同じよう
な深刻な事件を絶対に京都市で起こしてはなりません。そのためにも、議会としてこ
の問題を取り上げたいと思います。大切な子どもの命を守るため、微細なことにも触
れさせて頂きます。

いじめの認知件数は全国で年間約7万件。学級制度や班行動など、半強制的な集団行
動が求められる環境はいじめの温床ともなりやすく、そういった意味で学校は非常に
いじめが起こりやすい場所と言えます。そして、近年のいじめは加害者と被害者の間
に周りの児童生徒が割って助けることが減っていることや、いじめられる対象が昔よ
りもはるかに流動的になってきていることが特徴として挙げられます。周りの児童生
徒がいじめをはやし立てたり、いじめを見て見ぬをふりをすることも多く、いじめを
さらに悪化させることもあります。また、家庭の教育力の低下や、個人の思いやりが
希薄化していることもあり、いじめ被害者個人だけでは対応しきれない深刻な状況に
発展しやすくなっています。

いじめの被害者になった児童生徒は学校へ行くことが憂鬱になり、授業中や休み時
間、学校行事、あらゆる場面で不安に陥ります。そしてついには、不登校やうつ症
状、また学習障害などをもたらし、ひどい場合には自殺にもつながります。これは、
本来安心して受けられるべき義務教育の環境を著しく脅かすものです。こういった危
険性が、どの児童生徒にも流動的かつ突発的に起こりうるとすると、非常に多忙な教
育現場の中であっても、特に本腰を入れて対応に励むべき課題ではないでしょうか。

それでは問題点を口述させて頂きます。

<いじめの認知が少ない>

京都市のいじめの認知件数は平成22年度で220件であり、その内訳は、小学校で
156件、中学校で54件、高校で4件という結果となっています。これは、単純に
計算して、いじめが最も発生しやすいとされる中学校において、4校に1校はいじめ
が認知されていないという計算になります。近年における京都市の1000人あたり
の認知件数は2件前後と、全国平均の約6件を大幅に下回っています。認知件数の多
い熊本県では、平成22年度で27.6件であり、その差は京都市の14倍にあたり
ます。これらの数値から考えると、京都市では、いじめの発生件数がそもそも少ない
というより、認知されていないいじめが水面下に相当数潜んでいるのではないでしょ
うか。

その理由として、いじめ発見のためのアンケートに着目します。

<アンケート調査での認知不足&アンケート内容の不足>

文部科学省の平成22年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調
査」によると、いじめ発見のきっかけは、?学級担任の発見?アンケート調査?本人
からの訴え?当該児童生徒の保護者からの訴えの4項目で80%以上を占めます。京
都市では、年に1度しかアンケートを実施しない学校の割合が多い状態ですが、年4
回以上アンケートを行っている自治体の多くでは、認知件数が高くなる結果が如実に
表れております。このことからも、アンケート調査はいじめ発見に対してもっとも効
果的な一つではないでしょうか。

現在京都市では、学級担任によるいじめ発見が高い一方で、アンケートによる発見
は、わずか1〜2%に留まっております。京都市のいじめ認知件数が少ないことは、
アンケート調査によるいじめ発見が少ないことに関連しているようにも思われます。

 また、活用できていないという面で、アンケートの内容にも注視すべきです。

こちらが京都市教育委員会から学校に指示しているアンケート項目です。後ほど他都
市のアンケートを提示しますが、そちらとサイズを合わせるため文字が小さくなって
おります。質問項目は「友達とのことで悩んでいることはあるか、悩み事は次のうち
どれか、友達からどのようにいじめられているか、いじめをなくすためにはどうすれ
ばよいか」、といった4項目に留まります。一方で、認知件数の高い熊本市のものを
見てみると、質問項目は14項目あり、いじめ被害者だけでなく、いじめを傍観して
いる人間も視野に入れながら、最後はネットいじめにも言及しています。

京都市のアンケートは、児童生徒の指導用とされていますが、もっといじめの実態を
把握する意味合いで、傾向と対策を掴む調査資料として活かしていただきたいと思い
ます。各学校での裁量を残しながらも、負担をできるだけ減らし、京都市として統一
的なデータを残せるようにすることが望ましいと考えます。

その他にもアンケートで配慮すべき点があります。

まず第一に、いじめに特化したアンケートにすることです。調査方法は生活実態調査
に付随したものよりも、よりいじめ問題単独に特化することで、当然いじめの発見率
が高くなることが、文部科学省の統計からも見てとれます。

そして第二に、教職員のいじめ発見への強い姿勢です。児童生徒がいじめアンケート
になかなか口に出せない本音を記入するには、少なからず心理的負担が伴います。い
じめ被害者にとっては、加害者側に不審に思われればさらにいじめが増すのではない
か、また周りの人間にとっては、事実を漏らせば次は自分がその標的になるのではな
いかといったリスクが生じます。児童生徒たちにとって、“ちくる”という感覚がい
かに恐怖であるかをしっかりと認識したうえで実施する必要があります。

京都市の現状は教室で一斉にアンケートをとっておりますが、自宅に持ち帰って記入
し後日提出する、マークシート式を多く組み込む、いじめについて書くことがない場
合は関係のない文章を書き写してもらい全員がペンを動かしている状態にする、など
の対策を講じるべきだと考えます。

以上のことから、特に保護者や教師の目に触れにくいいじめをキャッチするためのア
ンケートを上手く活用できておらず、発見を逃がしているのではないかと考えられま
す。たかがアンケートと一見瑣末なものに感じられても、大変な事件が起こってから
では取り返しがつきません。そのうえで、アンケートの回数を増やし、いじめの内容
に特化する形で項目を充実させ、取り方にも工夫をこらすべきではないでしょうか。
京都市はアンケート調査でのいじめ発見が2%程度という非常に低い状態を踏まえた
うえで、今後の改良へのご見解をお示しください。

<いじめ対処の京都のスタンス>

いじめについてはもう一点、いじめ発見後の京都市のスタンスをお伺いします。今回
いじめ問題が過熱する中で、東京都品川区ではいじめ加害者への「出席停止」を積極
的に進めていくとの見解を発表しました。現在、出席停止は全国的にも実施例は少な
いのが現状ですが、いじめが悪質化する中で、いじめの抑止力や教育現場の安全配慮
として一定程度、出席停止の積極的な適用を検討する自治体も出てきております。た
だ、京都市においては、学校外でのいじめ発生や、加害者生徒の反省にそれほど効果
がないとの点で前向きな検討はされておりません。たしかに出席停止や別室登校を積
極的に進めることは、義務教育との整合性に配慮が必要です。しかし、児童生徒が非
常に深刻な環境に立たされる危険性を考えれば、一定の抑止力は必要であると私たち
京都市会議員団は考えております。加害者が安心して義務教育を受ける安全配慮も必
要ですが、それ以上に被害者や周りの児童生徒の教育環境を整えることに目を向ける
ことが重要ではないでしょうか。

出席停止や別室登校の是非を巡る 姿勢から、各自治体の教育委員会が今後いじめ発
覚後の対応に積極的に取り組もうとしているかどうか、その意識の差が感じられま
す。京都市として、是非、いじめ加害者の対応に苦悩する学校現場の負担を少しでも
軽減し、安全な教育環境を提供するための方針をお示しいただきたいと思います。こ
の姿勢は、現場職員の対応に大きな影響をもたらすものであると考えます。

教育委員会の承認が必要な措置について、その指針を示すことで、現場の判断のブレ
を抑え、いじめ対応業務をより円滑に進められる態勢を望みます。是非今一度、京都
市の確固たるいじめ対応への強い意識をお示しください。

2.五山送り火の薪の表皮について

 次に昨年の五山送り火で陸前高田市から取り寄せた薪の取扱についてお伺い致しま
す。

平成23年度の五山送り火の際に、残念ながら焚くことのできなかった薪は、一年余
り京都市内で保管されていましたが、ようやく幹の芯の部分を使って鎮魂、慰霊、復
興支援の思いを込めた工芸品として一つの使い道が示されました。しかし、使われた
幹は大きく皮を取った芯の部分のみで、皮の部分や薪の形状が不整備だったものに関
しては現在も倉庫に残されたままです。そのため、未だに昨年セシウムが検出された
部分については具体的な措置がなされておりません。

京都市は今年の7月において、受け入れた薪のセシウムの検出されていない幹の芯の
部分を使って工芸品を作り、その他の部分の取扱いについては、いましばらく時間を
かけて検討したいとの取扱方針を出されました。そして、それから2ヶ月が経ちまし
たが、状況はいかがでしょうか。がれき広域処理の急遽見送りによって、薪の解決方
法の検討が期待されていた専門家委員会も既に解散をしてしまっております。この専
門家委員会では、セシウムを含んだ薪について何らかの方針が出されていたのでしょ
うか。

改めて、専門家委員会で何らかの検討が始まっていればその進捗をお示しください。
あるいは、専門家委員会では解決策が見出されていない場合、今後検討していかれる
ご予定はどのようになっているでしょうか。いづれにしても、取扱方針として示され
た、幹の芯以外の部分の取扱いにおける“いましばらく”とはいつまでのことを指さ
れておられるのか、お考えをお示しいただきたいと思います。

京都市会議員 江村理紗