私が市議として活動を始めて早2年。
仕事の場が民間企業から行政・議会に変わり、
価値観や視点の違いでギャップを感じることは多くあります。
そしてその中でも、『安心・安全』というキーワードには度々腑に落ちない
ものを感じています。
行政は「安心・安全」という言葉を非常に好み多用します。
もちろんより安全であり、安心できることに越したことはないので、
そのキーワードを否定するつもりは全くありません。
民間でも「安心・安全」のキーワードは重要視されていますが、
公共性を伴うものは市民の生活を守る観点から一層安心安全が必要とされます。
しかしそれにしても、私は行政の意味する安全や安心が
時に別の含みを持っているのではないかと感じさせられしまうのです。
例えば今回、ファシリティーマネジメントの観点から地下鉄駅のエレベーター、
エスカレーターの保守点検業務について、コスト削減を検討するよう独立系業者を
含めた競争入札を提案しました。
京都市では昇降機の保守点検業務に一基当たり年間90万円以上(民間施設の2〜3倍)、
全体で毎年2億円近い経費がかかっています。
近年メーカーによっては独立系業者に委託してもかなり高い水準で保守点検を行える
ようになってきているため、他都市でも公共施設の維持管理コストの削減の向け、
今回私が提案したような動きが見られます。
議論した上で、今後「安全が見込めたらコスト削減していく」との回答は得ましたが、
腑に落ちないものを感じました。
そもそも交通局は「安全性に疑いがある」としてますが、教育委員会では既に独立系
業者にまで門戸を広げ、実際に教育施設のメンテナンスを委託しています。
市民の安全・安心を守るためという常套句を使えば、議会はそれ以上事業を厳しく追及
しにくくなるため、当然話が前に進まなくなります。
中には“安心・安全のためにはどれだけコストを使っても良い”という議員もいます。
これは完全に見解の相違です。
安心・安全を守るのはもちろん大前提ですが、京都市の危機的な財政状況を見れば
行政改革は避けられず、安全に加えてコスト意識も持たなければなりません。
行政はコストを掛けても自分たちの給与に影響は及びませんが、万が一問題が起これば
「問題が起こらないようベストを尽くしていたのか」という責任が及びます。
これが、高コスト体質を生み出している要因です。
残念ながら他都市と比較しても京都市はその傾向が非常に顕著です。
本当に市民を守りたいのであれば、長期的視野で市民の暮らしを支えられる
財政運営を実現することだと思います。
繰り返しますが、決してより安心・安全であることは否定しません。
しかし、貴重な税金を扱う責任、京都市の持続可能な発展のために有効な
判断を下せる行政であることを強く望みます。
京都市会議員 江村理紗