京都の市場は大丈夫?

ガス工場跡地という不安 京都市場の地下に眠るガス工場の足跡

京都市ガス工場跡地が食品市場!京都市議会議員江村りさ

東京都の豊洲新市場の問題が報道される中、「京都の市場も昔はガス工場の筈だが大丈夫だろうか?安全性を確かめて欲しい」との声が市民から寄せられました。市場近くのリサーチパーク近隣には今もガスタンクがあり以前はガス工場跡地だったと聞くが、中央市場の件は聞いたことがない。まさかとは思いつつ、食の根幹を司る市場の安全性を確かめるべく調査を開始しました。

何度も法務局へ足を運び調査を進めると、京都の中央卸売市場青果棟において石炭ガス工場の跡地である実態が見えてきました。京都市が昭和46年に敷地を購入するまでの約60年間にわたり、大阪ガスと京都ガスが所有しており、過去の航空写真や地図、及び工場で導入されていた設備、当時の時代背景などから、石炭による都市ガスの製造が行なわれた可能性が極めて高いことが分かりました。

(写真の通り、国土地理院による昭和20年ごろの航空写真には京都ガスが所有していた土地にガスタンクが映っている。右側が島原工場で、後の中央卸売市場(青果棟部分)。左が朱雀工場であり、後の京都リサーチパーク。)

そうなれば、豊洲と全く同じ土壌汚染への懸念が生じます。大阪ガスが平成16年に朱雀工場跡地である京都リサーチパークの土壌汚染調査を独自に実施しており、その結果では土壌ガスから基準値の最大76倍となるベンゼンが検出されていたことが分かりました。残念ながら市場青果棟部分の島原工場跡地の土壌汚染調査を実施した経過は見当たりませんでした。

↑石炭によってガスを製造する機器が次々と増設された経緯が表記されています。

島原・朱雀工場で導入された水平レトルトは、初期の都市ガスの製造設備であり、耐火煉瓦で造られた円筒型またはカマボコ型の炉を水平に配置し、石炭を投入して周囲から1000~1200度前後で加熱して石炭ガスを得るもので、最後にコークスが残ります。豊洲と同じく、石炭などを原料として都市ガスを製造する工程には、ベンゼン、シアン化合物などが発生し、石炭中に含まれる水銀、砒素、鉛、クロムなども副生され、工場敷地の土壌や地下水を汚染する可能性があります。

↑当時の絵葉書にも「京都瓦斯株式会社」の工場の写真が残されていました。

京都市の市場は今後10年以上をかけ再整備を実施していくが、土壌汚染が疑われることについて、「市として過去の所有者や土地利用状況をできるだけ遡って調べる土地履歴調査及び空気汚染調査を直ちに行う」よう議会で求めました。
しかし市は、市場の青果棟部分の土地を大阪ガスから買ったことは認めたものの、「あくまで市場の安全性を主張し、コンクリートかアスファルトで覆っているためいずれも必要性はない」と主張しています。
しかし、近隣の朱雀工場跡地の調査では基準値を超えるベンゼンやシアン化合物などが検出されており、昭和50年代に建てられた経年劣化が進む青果棟も揮発のリスクが拭えません。ガス工場の跡地と指摘される地で土壌汚染調査を実施したことがないまま、安全と言い切れるでしょうか。

不安が残るのは安全性だけでありません。再整備に伴う費用と、市場で営業する仲卸業者などの事業者負担への影響です。中央市場は今後数年かけて再整備が計画され、すでに一部工事が始まっています。整備予算は600億円で、その内訳は国庫支出金より140億円、京都市が110億円、事業者が350億円となっています。整備後の事業者の使用料は現在の1.5倍から2倍になるとされています。
市は市場の余剰地を売却し事業者負担を「できるだけ2倍よりも低いところに持っていく」としていますが、その余剰地こそがガス工場跡地で土壌汚染の不安が残る青果棟部分なのです。この余剰地の売却には85億円を見込んでいますが、土壌汚染が発覚すれば使用料の値上げ幅軽減につなげる計画も一転します。


市内で土壌汚染が出た南部クリーンセンターでは、対策費に23億円の追加資金がかかり、その分整備に時間も要しました。土壌汚染にはとにかく時間と手間とお金がかかる。ただし、早期に汚染を把握出来れば「原位置浄化」という時間はかかるが化学物質やバイオなどで浄化する手法も考えられ、土を掘削して持ち出したり、盛土を行うよりも大幅に低コストとの情報もあります。再整備を円滑に進め、事業者の使用料の値上げ拡大を防ぐためにも、まずは青果棟の現状を把握することが肝要です。

京都市の市場の再整備は始まっています。とにかく、真摯に過去の土地の歴史を受け止めて、一日も早く調査をする必要があります。未来にかかるリスクをなくしていくことが重要です。
京都市は安全性を示す客観的な指標を出そうとはせず、それより風評被害が生じる懸念を強調しています。しかし、環境基準を超えた汚染の検出を問題視することを「風評被害だ」とする見解は、市民への食の安全性確保が後回しになってはいないでしょうか。食の安全性や信頼が確保できるのか、消費者と市場関係者の理解が得られるのかが最も向き合うべき課題です。

チラシ24号2017年10月発行より抜粋

市民のため、市場関係者のため、今後市場で働いていく人のため、真摯に向き合うべきです。
市民の皆様からのご意見、ご要望を是非お寄せ下さい。